耳の後遺障害は、聴力障害と耳介の欠損に分かれています。
聴力障害
聴力障害の等級は、純音による聴力レベル(純音聴力レベル)と語音による聴力検査結果(明瞭度)を基礎として認定されます。
・聴力検査は日を変えて3回行います。ただし、語音による聴力検査は検査結果が適正と判断される場合、1回で差し支えありません。
・検査と検査の間は7日程度あけます。
・等級認定は2回目と3回目の測定値の平均純音レベルの平均によって行います。
(2回目と3回目の測定値の平均純音聴力レベルに10dB以上の差がある場合には、さらに聴力検査を重ね、2回目以降の検査の中でその差が最も小さい2つの平均純音聴力レベルの平均(差は10dB未満)により行います。)
・平均純音聴力レベルは周波数がA500ヘルツ、B1,000ヘルツ、C2,000ヘルツ、D4,00ヘルツの音に対する聴力レベルを測定し、(A+2B+2C+D)÷6で求めます。(6分式)
耳の障害は両耳と一耳に分かれて聴力障害を低下したことに関する後遺障害の等級は、下記のとおりとなります。
両耳の聴力
等級/別表第2 | 障害の程度 |
4級3号 | 両耳の聴力を全く失ったもの ・両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの ・両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの |
6級3号 | 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの ・両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上のもの ・両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上80dB未満であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のもの |
6級4号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの ・1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの |
7級2号 | 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの ・両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの ・両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの |
7級3号 | 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの ・1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの |
9級7号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの・両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの ・両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの |
9級8号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの ・1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの |
10級5号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの・両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの ・両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの |
11級5号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの ・両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のもの |
一耳の聴力
等級/別表第2 | 障害の程度 |
9級9号 | 1耳の聴力を全く失ったもの・1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの |
10級6号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの ・1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上90dB未満のもの |
11級6号 | 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの ・1耳の平均純音聴力レベルが70dB以上80dB未満のもの ・1耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの |
14級3号 | 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの ・1耳の平均純音聴力レベルが40dB以上70dB未満のもの |
耳介の欠損
耳殻の欠損は下記のとおりとなります。
等級/別表第2 | 障害の程度 |
12級4号 | 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの ・耳介の軟骨部の1/2以上を欠損したもの |
※耳介の欠損障害については、耳介の欠損障害としてとらえた場合の等級と醜状障害としてとらえた場合の等級のうち、いずれか上位の等級が認定されます。
耳漏
耳漏については下記のとおりとなります。
等級/別表第2 | 障害の程度 |
12級相当 | 常時耳漏があるもの |
14級相当 | その他のもの |
14級相当 | 外傷による高度の外耳道狭窄で耳漏を伴わないもの |
外傷により耳漏がある場合には、手術で治療をしたうえでなお耳漏がある場合に後遺障害等級認定されます
耳鳴り
耳鳴りについては下記のとおりとなります。
等級/別表第2 | 障害の程度 |
12級 | 耳鳴に係る検査によって難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるもの |
14級 | 難聴に伴い常時耳鳴りのあることが合理的に説明できるもの |
難聴とは、平均純音聴力レベルは40dB未満であっても、耳鳴りが存在するであろう周波数純音聴力レベルが他の周波数純音聴力レベルと比較して低下しているものをいう。また、耳鳴りに係る検査とは、医学的検査(ピッチ・マッチ検査、ラウドネス・バランス検査)により「耳鳴が常時ある」と評価できるか、検査結果が出なくても「医学的に合理的に耳鳴りの存在を説明できる場合」に等級が認定されます。
「耳鳴が常時ある場合」としては、昼間は自覚症状がなくても、静かな夜間に耳鳴の自覚症状がある場合を含みます。
「医学的に合理的に耳鳴りの存在を説明できる場合」とは、耳鳴りがあることが騒音被爆歴や外傷等から合理的に説明できる場合をいいます。
平衡機能障害
内耳の損傷による平衡機能障害は、神経系統の機能障害の一部として評価できる、神経系統の機能の障害に定められている認定基準により等級を認定することとなります。
耳介の欠損障害
耳介の大部分を欠損したとは、耳介軟骨部の2分の1以上を欠損したものをいいますが、耳介は左右で系列が異なるので、両耳の耳介を欠損した場合は、1耳ごとに等級を定めてこれを併合します。
耳介の大部分を欠損したものは「耳介の欠損障害」と捉えた場合の等級と「外貌に著しい醜状を残すもの」として捉えた場合の等級のうち、いずれか上位の等級を認定することとなります。「外貌に著しい醜状を残すもの」は7級12号であるので、この等級の適用が可能となります。この場合は、併合の取り扱いとはなりません。
耳介軟骨部の欠損が2分の1以上に達しない場合は、「外貌の単なる醜状」の程度に達する場合には、醜状障害として12級14号に認定することとなります。
まとめ
耳の後遺障害についていかがでしたでしょうか。
後遺障害は、保険会社に言われるままに進めることなく、正しい知識を持って取り組んでいただければと思います。それには、交通事故問題に特化している弁護士に相談されることをおすすめします。
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後遺障害慰謝料の等級別による賠償基準例
慰謝料には「自賠責基準」「任意保険基準」そして「弁護士(裁判所)基準」という3つの基準がありますが、過去の裁判例を参考にする裁判所基準が最も高額な慰謝料を獲得する事ができます。
この裁判所基準による慰謝料を獲得するには、交通事故に特化した弁護士に依頼する事で、慰謝料が数百万円以上増額する可能性があります。
後遺障害者等級 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準 | 裁判所基準 |
第1級 | 1,100万円 | 各保険会社が独自に定めていますが、自賠責保険基準よりやや高いが、ほぼ同額がほとんどです。 | 2,800万円 |
第2級 | 958万円 | 2,370万円 | |
第3級 | 829万円 | 1,990万円 | |
第4級 | 712万円 | 1,670万円 | |
第5級 | 599万円 | 1,400万円 | |
第6級 | 498万円 | 1,180万円 | |
第7級 | 409万円 | 1,000万円 | |
第8級 | 324万円 | 830万円 | |
第9級 | 245万円 | 690万円 | |
第10級 | 187万円 | 550万円 | |
第11級 | 135万円 | 420万円 | |
第12級 | 93万円 | 290万円 | |
第13級 | 57万円 | 180万円 | |
第14級 | 32万円 | 110万円 |