後遺障害等級が4級ともなると労働能力喪失率は92%ともなり、重度の後遺障害に認定されます。もはや一人で生活するのは困難な4級の症状にはどんなものがあるのか、また、獲得できる慰謝料はどの程度になるのか、ご紹介していきます。
後遺障害等級4級に認定される症状
下記の表に後遺障害等級4級と認定される後遺症(後遺障害)をまとめましたので、ご確認ください。
後遺障害の症状
4級|1号:両眼の視力が0.06以下になったもの
- 視力は万国式試視力表による矯正視力を指します。コンタクトレンズで矯正する場合も含まれます。
4級|2号:咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
咀嚼機能の著しい障害
粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの
言語機能に著しい障害
以下4種の語音のうち2種の発音不能のもの又は綴音機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができないものとされています。口唇音(ま行音、ぱ行音、ば行音、わ行音、ふ)
歯舌音(な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音しゅ、し、ざ行音、じゅ)
口蓋音(か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)
咽頭音(は行音)類の発音方法のうち、2種類の発音方法が出来なくなったケースが後遺障害等級4級2号と認定されます。
4級|3号:両耳の聴力を全く失ったもの
- 聴力障害は、オージオグラムによる純音聴力レベル及び語音による聴力検査結果である明瞭度を参考に認定します。全く失ったものとは、両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの又は両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のものが該当します。
4級|4号:1上肢をひじ関節以上で失ったもの
- 左右どちらかの片腕が肩から肘上の間で失われた場合に該当します。
4級|5号:1下肢をひざ関節以上で失ったもの
- 片足を股の付け根から膝上の間で失くした場合は、後遺障害等級4級5号と認定されます。
4級|6号:両手の手指の全部の用を廃したもの
- 手指の用廃とは、a手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの、b中手指節関節または近位指節関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されるもの、c母指の橈側外転又は掌側外転のいずれかが健側の1/2以下に制限されているもの、d手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したものが該当します。
4級|7号:両足をリスフラン関節以上で失ったもの
- 足先の部分だけを失ったケースだと後遺障害等級は4級7号です。リスフラン関節というのは“足の甲”と言われる部分の、ほぼ中央にある関節の事を言います。
後遺障害4級の基準別慰謝料の相場
交通事故の慰謝料を請求する際は、3つの基準があります。
自動車に必ず加入しなければならない強制保険(自動車損害賠償責任保険)の『自賠責基準』と、加入が任意である任意保険の『任意保険基準』、そして裁判所や弁護士による『弁護士基準(裁判所基準)』があります。
この3つの基準で、それぞれ支払われる慰謝料の金額が大きく異なってきます。この3つの基準の違いによって、慰謝料がどのくらい変わるのかを確認していきましょう。
自賠責基準の後遺障害4級の慰謝料
自賠責保険は法律で定められている強制保険で、後遺障害4級の慰謝料は被害者の個別具体的な事情に関わらず、当該金額は、 と定められています。 後遺障害4級の適正な慰謝料額を検討する上での「最低基準」と考えられています。
任意保険基準は原則非公開
ここでいう保険会社は任意保険と呼ばれるものです。通常、 自賠責保険でカバーされない損害部分を支払うために利用されています。
慰謝料について、保険会社は基準額を明らかにしていません。そのため、被害者は適正な金額が支払われているかどうか、わからないという問題があります。一般的には、任意保険基準は弁護士基準よりも低く、自賠責保険の上限と同額か、もう少し高い程度となるケースが多いです。
弁護士基準による後遺障害4級の慰謝料
裁判所は過去の判例の集積から、交通事故の被害の損害賠償額について一定の目安を持っています。この目安を一般的には裁判所基準といいますが、これは日弁連の発行する『民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準』(通称・赤い本)に記載されています。 同基準では後遺障害4級の慰謝料額は1,670万円とされています。
この弁護士基準は、交通事故の被害者が弁護士に依頼し、弁護士が示談交渉や後遺障害等級申請の手続きを行ったものであり、別途弁護士費用がかかりますが、このように、 自賠責基準と裁判基準では、3倍くらいの慰謝料の差がありますので、一般的には大幅に慰謝料が増えることがわかります。
この金額は相場であるため、後遺障害認定の有無や交通事故に強い弁護士の場合は、100万円単位で補償額が変わる可能性がある大切な事項です。したがって、後遺障害が認定される可能性がある場合には、必ず交通事故の専門家へ相談されることをおすすめします。
- <後遺障害等級と後遺障害の慰謝料一覧>
等級 | 自賠責基準 | 任意基準(推定) | 裁判基準 |
第1級 | 1,100万円 | 1,600万円 | 2,800万円 |
第2級 | 958万円 | 1,300万円 | 2,370万円 |
第3級 | 829万円 | 1,100万円 | 1,990万円 |
第4級 | 712万円 | 900万円 | 1,670万円 |
第5級 | 599万円 | 750万円 | 1,400万円 |
第6級 | 498万円 | 600万円 | 1,180万円 |
第7級 | 409万円 | 500万円 | 1,000万円 |
第8級 | 324万円 | 400万円 | 830万円 |
第9級 | 245万円 | 300万円 | 690万円 |
第10級 | 187万円 | 200万円 | 550万円 |
第11級 | 135万円 | 150万円 | 420万円 |
第12級 | 93万円 | 100万円 | 290万円 |
第13級 | 57万円 | 60万円 | 180万円 |
第14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
後遺障害等級4級で請求できる逸失利益の相場
逸失利益とは、首や手に鋭い痛みとしびれが残ってしまって、仕事が半分しかできなくなったり、事故で後遺障害を負わなければ将来得られていたはずの収入に対する保障です。逸失利益は障害の種類や被害者の年収によって金額が変わります。
後遺障害の逸失利益は【被害者の年収 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数】の計算式で算出されます。
例えば、
年齢 | 年収 | 労働能力喪失率 | ライプニッツ係数 |
45歳 | 500万円 | 92% | 22年間(13.163) |
※ライプニッツ係数で症状固定から67歳まで(ただし症状によっては5~10年程度に制限されることがある)
年収(500万円)×労働能力喪失率(92%)×ライプニッツ係数(13.163)=60,549,800円が弁護士基準での逸失利益となります。
弁護士基準による後遺障害4級の慰謝料(16,700,000円)+ 後遺障害等級4級の逸失利益(60,549,800円)=77,249,800円となります。
労働能力喪失率
後遺障害等級によって変わってきますが、後遺障害等級4級の場合は 92/100の「92%」となります。
表:労働能力喪失率
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 | 後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
第1級 | 100/100 | 第8級 | 45/100 |
第2級 | 100/100 | 第9級 | 35/100 |
第3級 | 100/100 | 第10級 | 27/100 |
第4級 | 92/100 | 第11級 | 20/100 |
第5級 | 79/100 | 第12級 | 14/100 |
第6級 | 67/100 | 第13級 | 9/100 |
第7級 | 56/100 | 第14級 | 5/100 |
表:中間利息控除係数(ライプニッツ係数)
67歳で定年退職をすると仮定して、現在の年齢から算定(22年)していきます。
能力喪失期間(年) | ライプニッツ係数 | 能力喪失期間(年) | ライプニッツ係数 |
1 | 0.9524 | 18 | 11.6896 |
2 | 1.8594 | 19 | 12.0853 |
3 | 2.7232 | 20 | 12.4622 |
4 | 3.546 | 21 | 12.8212 |
5 | 4.3295 | 22 | 13.163 |
6 | 5.0757 | 23 | 13.4886 |
7 | 5.7864 | 24 | 13.7986 |
8 | 6.4632 | 25 | 14.0939 |
9 | 7.1078 | 26 | 14.3752 |
10 | 7.7217 | 27 | 14.643 |
11 | 8.3064 | 28 | 14.8981 |
12 | 8.8633 | 29 | 15.1411 |
13 | 9.3936 | 30 | 15.3725 |
14 | 9.8986 | 31 | 15.5928 |
15 | 10.3797 | 32 | 15.8027 |
16 | 10.8378 | 33 | 16.0025 |
17 | 11.2741 | 34 | 16.1929 |
後遺障害4級の慰謝料を増額させるには
上記の金額は自賠責保険という最低限の基準で算出された金額のため、治療が長引いた場合や、休業損害なども到底自賠責の保険金で賄うことはできませんが、弁護士に依頼することでそれを訂正な価格まで戻す事が出来ます。
これが交通事故の問題を弁護士依頼すべき最も大きな理由でしょう。
後遺障害慰謝料を弁護士基準で受ける
後遺障害には3つの基準がありますが、弁護士基準で計算するだけで、慰謝料や損害賠償金は大幅にアップします。
適切な後遺障害認定を獲得する方法
後遺障害等級の認定を低く見積もられる事なく、確実な認定を受けたいなら、「被害者請求」を行う事をお勧めします。
通常は保険会社が申請手続きなどのすべてを行ってくれますが、それを被害者自身が診断書などの書類を揃えて申請することで、より詳しい内容の書類を提出することができ、適切な後遺障害の等級が認定されやすくなります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
後遺障害等級4級に認定される症状は、労働能力喪質率92%という非常に大きな損害が残るもので、今後の人生においてほぼ確実に介護が必要となるものとなります。、保険会社に言われるままに進めることなく、正しい知識を持って取り組んでいただければと思います。
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2級 ▶ 後遺障害等級第2級の症状と認定を受けられる後遺症の具体例
3級 ▶ 後遺障害等級第3級の症状と認定を受けられる後遺症の具体例
5級 ▶ 後遺障害等級5級を獲得できる症状と慰謝料を増額させる方法
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8級 ▶ 後遺障害等級8級に認定される症状
10級 ▶ 後遺障害等級10級となる症状と慰謝料の相場
11級 ▶ 後遺障害等級11級の症状と正当な等級を獲得する手順
12級 ▶ 後遺障害等級12級の適切な慰謝料を獲得する7つの知識
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